「煌! 男の娘塾」 Review!

なんだこの「○! 男塾」みたいなタイトルは?! っていう感じではありますが、購入したので早速書評みたいな、感想文みたいな感じで記事にしてみます。

昔からこのブログにお越し頂いているみなさんは、冷泉が十年来「仮装」と称して、大学在学中は「お姉様」などという肩書きを頂戴しつつ長く取り組んできた話題の一つであると分かるはずです。

中の人もそろそろ一般に言うところの「お肌の曲がり角」が近づき、「そろそろ引退か……」などと思いつつダラダラと続けているものです。
直近の画像はTwitterなどを参照していただくとして、長いこと行き詰まっていたことはまた事実です。netstat Lab.ではこのコスプレに関わる一連の流れを「開発」と称し「プリプロダクション(仕様設計)」→「プロダクション(撮影)」→「ポストプロダクション(リリース処理)」という三つの作業に分けていますが、そのうちのプリプロダクションにあたる工程での「身体作り」や「ベースメイクの手法」は、過去7年間ほとんど変化していません。
これらの手法は、まだ中の人のヒゲも薄く、過剰なストレスからくる不規則な生活に悩まされる前に決められたもので、現在の状況に合わないものでした。

学生時代が終わり、そして就職となりました。田舎の片隅で、何のために2LDKの部屋を借りたのか——単に家賃が安いとかではなく、撮影専用の部屋が欲しかったからでした。環境は揃っても、被写体がダメなのでは意味がありません。もんよりしながら試行錯誤しましたが、小手先のテクニックばかりが伸びていき、肝心なところには手つかずのままでした。

そんな折に、Webを巡回していて見つけたのが、この本でした。
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何と言いますか、この手の薄い本は「どうせ微妙な絵で一般論しか描いてないんだろ」と思っていて、期待はしていなかったのですが、甘かったです。ウチで10年間悩んで潰してきた『不具合』の数々がこの本に全て収められていたのですから。

この本の第1印象は「ある程度の数をこなし、壁にぶちあたって伸び悩んでいるみなさんに向けた本なのだな」でした。それは前文の記載によるところが大きいのですが、何度か読み直しているうちに実は初心者のステップアップや教本としてもいけるのではないかと思うようになりました。

この本は漫画形式で、三つの話題を六つのセクションにわけて解説しています。
即ち:「1. 解剖学的な女性と男性の体型の違いをどのようにして埋めるか」「2. ヅラ(ウィッグ)とは」「3. メイクについて」です。特に、最初に躓く「男性と女性の解剖学的な違いをどのようにして埋めるか」について、基礎的な部分について解説をしているのは評価でき、さらにそれを解決する手法を紹介しているのは大変素晴らしいです。
さらに体幹の解剖学的な違いから初心者に向く衣装・そうでない衣装に言及していることもあり、入門書としては適切な記述も散見されます。

ヅラについては、この本はコスプレの本ではありませんので軽く触れただけで、使用されている繊維についてなど、本当に基礎的な話題しか提供されていません。この辺りの話は女性向け(?)のコスプレ雑誌を当たる方がよさそうです。また、ヅラのセット・散髪に関する話題はなく、それも別個の情報源をあたる必要性があります。

最後に、メイクについて、基礎的な部分をステップバイステップで解説しており、周囲に理解のある女性がいない皆さんが勇気を振り絞って女性誌コーナーに行き、立ち読みをしてから本を選ぶという一種拷問のような苦行をしなくてもやっていけそうな解説ができていて、「なあなあ」で済ませてきた自分としては恥じ入るばかりでした。恥ずかしながら、時にはPhotoshopで肩代わりさせていたメイクの部分をどのようにしたらいいかなどが書いてあったりもして「ああ、これはメイクの仕方変えないといかんね」と考え直したりしました。

心構えや心理的状況について解説しているのも好感が持てます。女装というと「変質者」という扱いをされる社会状況ではありますが、「はじめてみて女性の気持ちがわかったような気がした」とか「社会的抑制傾向がみられる職業ないし性格に多い(専門用語で言うシゾイド傾向ともいえるでしょうか)」などと、必ずしも恥じるべき趣味ではないと自信を持たせてくれるように配慮はされています。(個人的な意見ではありますが、いい加減な格好で外出したり、写真を貼ったりするのは女性に対して失礼にあたると思っています。公序良俗に反する行為です。一定の配慮はしましょう。コスプレ会場であっても、気をつけましょう。他人に対する敬意を忘れてはいけません)

通読してみて「この本があればもう十年戦える」とまでは言いませんが、あと五年くらいはやっていけそうな気がしました。はじめて少し経った〜ある程度場数を踏んで、写真の自分と鏡の自分のギャップに悩んでいる皆さんに広くオススメできる良書だと思います。この内容に1000円の価値はあると思います。

ケチを付けるところは殆どありませんが、二つ三つばかり扱ってもよかったのではないかなあという話題があります。一つは「声」の問題です。変声期を迎えた男性は気管の長さが女性に比して短くなり、径も太くなるために、女性に比して1オクターブ低い発声をすることになります。これはしばしば「男の娘」として受け入れられる上で問題になります。とは言え、殆どの場合写真として提供されることのおおい業界ですから、運用の上ではさほど問題にならないのかもしれません。四肢や顔面の末梢の処理の問題——たとえば、男性ではオトガイの骨(顎のしゃくれ)や手の骨の発達がよく、脂肪の付きが悪いことから有力な「男の娘」を見分けるポイントになりますが、それの回避方法の提案があればさらに良かったのではないかと思います。この他にも複数のポイントがありますが、体表面にあるものであれ、仕草によるものであれ、そのあたりにページを割いても良かったのではないかと思います。

いろいろ書きましたが、初心者に向けた読み物としても、困ったときに読むマニュアルとしても、大体の困るところは網羅されていて、「おい俺の10年は1000円で買えるの?」と凹んでしまったくらいの本です。ステマの依頼が来たとか、取材協力したとかそういうことではありません。書店でみかけたら手にとってみてください。冷泉お姉様のオススメです。

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